『思いをつなぐ 英語で学ぶ、日本の矜持。』著者の大高英行と申します。この本は、「日本を愛する外国人の言葉」で英語を学び、「日本人として守るべきもの」に気づく一冊です。出版社の許可を得て、まえがき全文を以下に掲載致します。
『思いをつなぐ 英語で学ぶ、日本の矜持。』まえがき全文
Do not forget rightful pride in being Japanese.
日本人たるの矜持を失うなかれ。
矜持(きょうじ)とは、誇り・プライド・自負・自信のことです。この言葉は、神風特別攻撃隊の生みの親、大西瀧治郎(海軍中将)の遺言の一部です。
私は長年、心の病で苦しんでいました。現在は回復しつつありますが、そのきっかけになったのは、特攻隊が残したメッセージでした。「彼らの思いを知りたい」という気持ちから、歴史を学び、外国人の書物を読み、さらに英語の原書にあたることで、視野が広がりました。「日本の歴史はつながっている」と確信できたことで、日本人としてのアイデンティティを確立できました。自分の立ち位置を客観的に知ることで、周りを見る余裕が生まれ、メンタル回復につながったのだと思います。本書は、うつ病など心の病、漠然とした死への恐怖、自己不在や自信不足、ひきこもりで苦しむ日本人に向けて書いています。本書が、視野を広げ、心の健康を取り戻すためのきっかけの一つになれば、幸いです。
うつ病で倒れた時、私は営業マンとして働いていました。新規営業やテレアポが得意だったので、自分ではメンタルが強いと自負していました。しかし、うつ病で休職して仕事ができなくなると、途端に自信を喪失しました。今思えば、大企業との契約を勝ち取る等、目に見える仕事の成果だけが自分を支えていたのです。気がつけば、過労死の直前まで自分を追い込んでいました。実際の自分は、自己不在で自信を持てない性格だったのです。私の場合は、うつ病の直接の原因はストレスと睡眠不足でした。最初は、少し休めば元通りになると楽観していましたが、甘い考えでした。良くなるどころか、パニック障害・不眠・フラッシュバックも併発し、悪化する一方だったのです。最も辛かったのは、漠然と死にたいと思うこと、つまり希死念慮(きしねんりょ)でした。前触れもなく突然やってくる希死念慮は、私にとってまさに「死神」でした。
気を抜いたら死んでしまう、生死の境で、最大の救いとなったのは特攻隊の言葉でした。第二章で詳しく書いていますが、特攻隊は生死を超越した存在です。生死を超越した彼らの言葉だからこそ、生死の境にいた私の魂を癒やしてくれたのだと思います。
気がつけば私は、特攻隊の本を何度も読むようになりました。九州に住んでいるので、鹿屋・知覧・大刀洗にある記念館にも足を運びました。記念館で買った、手ぬぐい(特攻の母、鳥濱トメさんの言葉【なぜ生きのこったのか考えなさい 何かあなたに しなければならないことがあって 生かされたのだから】が書いてある)を部屋に飾り、希死念慮が発生する度に「特攻隊は国を護るため、家族のため、子孫のために死んだのだ。僕は生かされている。自殺するなど、特攻隊に対して申し訳ない。」と自分に言い聞かせ、歯を食いしばって耐えました。
精神のどん底、死ぬか生きるかギリギリの状態。真っ暗闇の中にいる私に、一筋の光となって道を照らしてくれたのは、特攻隊が残した言葉だったのです。
特攻隊の遺書を読むと、肉親への感謝、国を護る気概が書いてあります。戦後教育しか受けていない私にとって、「国のために」という感覚、そして「国体」という言葉の意味が、何度読んでもピンときませんでした。今思えば、無理もないと思います。両親も学校も、「国体」「祖国」について、一度も教えてくれなかったからです。私は、遺書の行間を読み取りたいと思い、歴史の勉強をはじめました。
そんなある日、『外国人が見たカミカゼ』という本に出会いました。そこで数多くの外国人が特攻隊の勇気を絶賛していることを知り、とても嬉しく感じました。特にベルナール・ミローの『神風』には衝撃を受けました。このような外国人の言葉をきっかけに、「日本」という祖国の姿が浮かび上がってきました。特攻隊については、第二章でまとめています。
第一章では、江戸時代から明治・大正時代にかけて来日した外国人の言葉を紹介しています。1549年に来たフランシスコ・ザビエルも、ちょうど100年前に来日したアインシュタインも、同じように日本人の美徳を賞賛しています。日本で魂の安らぎを得たという外国人の言葉を読んで、私は驚きました。外国人の言葉を通じて、日本人はずっと昔から、幸せに暮らしていたのだと想像することができました。先祖が歴史を紡ぎ、思いをつないで来たことに、ようやく気づくことができたのです。日本の歴史は世界有数の長さを誇ります。その中で先祖が積み重ねたものこそ「特攻隊員が命をかけても護りたかったもの」、つまり「日本の国体」だと理解できたのです。
第三章では、戦時中の日本を擁護してくれる外国人、戦後日本を応援してくれる外国人の言葉を紹介しています。例えば「日本将兵に対する恩義を末代にいたるまで決して忘れません」「日本国民への恩は決して忘れない」と感謝してくれる外国人が、たくさんいるのです。彼らの言葉を読むと、「日本人はもっと、祖国に自信をもって良いのだ」そういった勇気を与えてくれます。
本書の中心は、第二章です。特攻隊を起点にして、その前後を学ぶことで、驚くほど祖国のことを知ることができました。ザビエルが来る前の日本も、アインシュタインが来た戦前の日本も、そして現在も、私たちの日本はつながっているのです。先の戦争で負けたため、日本はGHQの占領政策によって歴史を断絶されてしまいました。歴史を奪われた影響で、戦後の日本人はアイデンティティ確立が困難になり、その苦しみが連鎖して様々な社会問題として噴出しているように感じます。しかし、外国人の書物が、断絶された日本の歴史、そして日本人の先祖の思いを、つないでくれていたのです。私は、外国人の言葉を通じて、日本人としての自分を見つけることができました。そして、自己を確認することで、周りを見る余裕が生まれました。歴史の延長線上に自分が立っていると自覚することは、日本人として自己のアイデンティティを確立するために不可欠です。視野を広げ、アイデンティティを確立することは、心を守るために重要なことだと思います。
外国人の言葉を味わうには、やはり英語で読むことが最善です。ですから本書では、英語と日本語の併記で紹介しております。本書で紹介する英文は、日本を称賛する言葉が大半です。元気をもらえますし、英語が好きになります。英文も是非、時間をかけて味わっていただきたいと思っています。日本語だと思わず読み飛ばしてしまう箇所も、英語と対応させながら読むことで、外国人の気持ちが心に響いてくることと思います。
「あとがき」では、私の闘病経験のことも書いております。心の病は誰にでも起こりうるものです。読者の中には、今現在、苦しんでいらっしゃる方や、その家族の方がいるかもしれません。何かの参考にしていただければ幸いです。また、Hikikomoriは日本独特の社会問題であり、英語にもなっております。本書に関連する項目ですので、ひきこもりの原因についても「あとがき」で紹介しました。
本書の制作において、様々な文献から引用させていただきました。出典を明記し、忠実に引用したつもりですが、誤りがありましたら責任はすべて著者にあります。
令和四年元旦 福岡県護国神社にて 著者しるす